派遣社員でももちろん産休・育休はとれる制度はあります
よく『派遣社員のような非正規社員でも産休・育休はとれるのだろうか』と心配事を聞きます。
産休手当・育休休暇手当は雇用保険から出ます。
条件を満たした従業員に対してどんな雇用形態であっても会社は産休・育休を取らせる義務があります。
産前産後休暇(産休)
出産のための休業(休暇)のこと。
産前は出産予定日の6週間前(多胎妊娠(双子以上)の場合は14週間)、産後は出産の翌日から8週間の休業期間のことをいいます。
【条件】
出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合14週間)に会社に雇用されていること
【出産手当金】
支給開始日以前の12カ月間の標準報酬月額平均÷30日×3分の2
育児休業(育休)
1歳に満たない子供を養育する男女労働者が、子供が1歳になるまでの間希望する期間、育児休暇を取得できます。
1歳になっても保育所が見つからないなどの一定の条件を満たした際には1歳6ヶ月まで育休延長が可能。さらに1歳6ヶ月の時点でも保育所が見つからない場合は最大で2歳まで延長可能です。
【条件】
育児休業を開始した日前2年間に雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上あること。
【育児休業給付】
休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%(ただし、育児休業の開始から6か月経過後は50%)
派遣社員の育児休業に関する法律が緩和され、以前に比べて育休は少し取りやすくなりました!
派遣社員では条件が厳しくなる
派遣社員だけではなく、正社員にも言える話ではありますが、企業にとって従業員の妊娠・出産・育児が理由とはいえ仕事を長期間休まれることは迷惑な話です。
正社員であっても『妊娠を報告したら退職するように言われた』『育休をとるといったら降格させられた』『妊娠を理由に転勤を命じられた』など、すべて労働基準法違反ですがトラブルが後を絶ちません。
派遣社員の場合は特に企業が難色を示すでしょう。
なぜなら、派遣社員というのは『臨時的に・誰でもできるような簡単な作業を依頼する』ために雇用している場合がほとんどです。
臨時で必要だから雇用しているのに妊娠を理由に頻繁に休む、体に負担のかかる業務をさせることができない、任期満了前に産休に入ってしまうことは企業からしたら困ります。
代わりの人材はいくらでも探せるので、妊娠していない派遣社員に代わってもらいたいというのは当然の考えでしょう。
法律で『妊娠を理由に解雇・契約更新をしない』とは禁止させています。
正社員・無期雇用の労働者の場合はこの法律に従うしかありませんが、派遣社員のような有期雇用の労働者の場合、抜け道があるため契約更新をされない可能性がでてきてしまいます。
有期雇用の壁
この壁が最も高い壁になります。
派遣社員は通常3ヶ月~1年の有期雇用契約の更新を繰り返して勤めるのが一般的です。
人間の妊娠期間は40週、産休に入るまでには36週は子供を身ごもりながら仕事をしなければなりません。
妊娠4ヶ月ぐらいからはおなかも大きくなり始めますし、他人の目から見ても妊娠がわかるようになってきます。
母子の安全、健康も考えて産休に入る直前まで会社に妊娠を隠し通すのは難しいのではないでしょうか。
多くの場合、妊娠を報告し、妊娠を分かった上で契約更新をするタイミングが出てきます。
派遣社員であっても『妊娠を理由にこれまで繰り返されていた契約更新をしない』というのは違法になります。
しかしながら、派遣社員が妊娠中であっても”妊娠以外の理由”で契約更新をしないということは残念ながら可能です。
企業側が腹の底では『妊娠したなら更新したくない』と思っていても表向きでは『人員削減のために契約更新しません』などと言われてしまっては、太刀打ちできません。
3年ルールの壁
派遣社員の雇用安定のために作られた、同じ派遣先では3年以上働くことができない『3年ルール』
派遣社員の雇用安定につながっているとはまったく思えませんが、産休・育休の取得を目指す派遣社員にとっては邪魔でしかない制度です。
たとえ、派遣先が産休が取得できるまで契約更新をしてくれるとなっても、妊娠のタイミングによっては3年ルールで契約更新がしたくてもできないとなります。
派遣先企業で直接雇用になったとしても雇用主の企業が変わってしまうので、育休の条件を満たすことができなくなってしまいます。
体調不良の壁
妊娠中は体調不良になりやすくなります。
妊娠初期には妊婦の8割くらいの人につわりの症状がでるようになり、長期期間仕事ができない状況になってしまう、入院してしまう人もいます。
妊娠後期になると、切迫流産などで予定より早く休まざるを得ない状況になったりすることもあります。
妊娠中とはいえ、体調不良で欠勤が多くなると、欠勤が多いことが理由に企業側は契約更新をしない合理的な理由となってしまいます。
派遣社員の産休・育休には派遣会社、派遣先企業の協力が不可欠
派遣社員の場合、産休・育休の条件で『出産予定日の6週間前(双子以上の場合14週)を含む契約がなければならない』があります。
派遣契約は月末などキリのいい区切りで行うことが多いですが、出産予定日はそんなことがありません。
例えば、契約の区切りが3/31で、産休に入るタイミングが4/1だった場合、最低でも4/1の1日だけの契約がなければ、派遣社員は産休・育休を取ることができなくなってしまいます。
企業にとってはたった1日の出勤のために契約を結ぶなんてめんどくさいことこの上ないですし、キリよく3/31に終わりにしたいと思うのではないでしょうか。
企業側が『派遣社員に産休・育休を取得できるように配慮してあげよう』という気持ちがなければまず無理です。
また、上記のような状況で、派遣先企業に契約更新の意思がない場合、派遣会社が単独で派遣社員と契約を結び(契約期間中はすべて欠勤扱い、もしくは有給消化)産休・育休取得条件を満たせるように配慮してくれる派遣会社もあるようです。
派遣会社としては産休・育休中は給料、社会保険料の支払いがないとはいえ、派遣社員に対して有給休暇は付与しなければいけないので、派遣会社にデメリットはあってもメリットはありません。
筆者が現在勤務するスタッフサービスに『産休取得まで派遣会社単独で契約を結んでくれるとこはあるか』と確認したところ、きっぱり『ないです』と言われました。
派遣会社も義務でもなんでもなく好意でしてくれることなので、当然です。
結局、派遣社員が産休・育休を取るには?
派遣社員が産休・育休を取ることは権利ではありますが、たくさんの難しい条件をクリアしなければ取得するとこができません。
派遣社員で妊娠を考えている方は『最悪の場合、産休・育休がとれなくてもいい』という考えでなければ難しいかもしれません。
本来このようなことは絶対あってはならないですが、派遣法、労働基準法がまだまだ行き届いてない部分だと思います。今後、改善されることを祈ります。
確実に産休・育休をとりたい場合は?
産休・育休を取得すると休暇中はこれまでの月収の5割~7割を受け取る事ができます。
このお金がもらえるかもらえないかの家計への影響は本当に大きいです。
残念ながら現在の日本の法律では、派遣社員が絶対に産休・育休をとれるかというと難しいというのが現実です。
絶対に産休・育休を取得したいと考えるのであれば、派遣のような有期雇用の仕事ではなく、無期雇用の仕事を探すべきだと思います。
正社員でなくても、非正規社員で雇用保険の加入条件を満たしてさえいれば産休・育休の取得は難しいものではありません。